モペゾム・ド・思考

抽象性、無意味、無駄、

すべて後にして

大いなる疲労とは、尊大なまやかしである。非実在の病理は、信仰の腐敗である。
重ね重ね、私は思い願ってきた。私よ金剛たれ。
万象を跳ね除け、いつの時代も不変の堰堤を築いてきた。私は不敗である。いつかの夢も、いつかの絶望も、完膚なきまでに焼き付くし、あらゆる災禍のなかで最後には笑っていた。どうでもよかった。人生について本当に投げやりだった。起きたことは過ぎ去りしことになる。過ぎ去りしことは忘るるべき事象へと昇華し、わたしはいつも乱気のごとく自由だったのだ。
過去も現在も未来も、所詮は三次元であり、時空の存在なき凡景へと均される。私は過去と今と未来の集約、すべての次元面と接続し、すべてを内包する。飛翔する蝶。余事象という余事象が未来を埋め尽くしているのなら、今全てを断裂したい。この一点、すべての接続するこの一点。あらゆる利益、あらゆる不幸、あらゆる凡象のうえに倒れる。
茹だる夏の夜。炎天の賑いを残した烏丸は摂氏31度を示していた。暑い。暑いはずだ。暑いはずの夜に、熱を奪われたもの。涼やかな風が、べたりと貼り付いたスラックスの表を撫でる。不思議な心地がする。途絶。正常さの喪失。足取りは軽い。全てが平面に見える。私は壁に向かって歩いており、未必の帰路へと就いていた。夜を越えること。夜を跨ぐこと。色々な思惑が頭を過り、残滓となって燻っている。これが真の意味での迷いなのだ。大いに迷い、誰に助けを求めるでもなく、それでいて悲痛さを湛えるよう努めた。助けてくれよ。声にもならない。真実そう思っているのかも分からない。揺れる頭蓋との乖離を待たず、結論を急くわけでもなく。どうにかこうにか無事であるように、ただそれもごく限りない可能性の泉で、私という存在が事切れぬよう、丁寧に丁寧に歩いた。
爆弾が起爆する。悲痛なる憐憫が滲み出る。私は私を制御できなくなっている。そう思えば恐ろしい。全人類と己を天秤に掛けるような傲慢さでありながら、その実は小さく怯えているなど。私は隠す。倨傲も自尊心も、実害も弊害も、大いなるうねりのなかで、その実在という実在を切り刻み、薫香さえ感じさせぬほど、細かく細かく、丁寧に丁寧に悪意を撒き散らす。勘づかれぬように。
何よりも重要なことだ。非実在の病理は、信仰の腐敗である。私は不敗なのだ。すべての次元と切り離し、時空の全てと断裂したとて変わりない。私の信仰は尊くも永劫に不敗なのである。