モペゾム・ド・思考

抽象性、無意味、無駄、

やまない雨はない。明けない夜もない。熱は冷め行く。喧騒もまた同じ。ぴしゃりと窓を閉じたように、私は独りになっていた。エンジンを止め、静止したハンドルに身体を寄せる。腕に顔を埋め、頭の中には目を閉じるか否かの逡巡。おのずと呼吸は鷹揚になる。日中の性急さとは裏腹にゆっくりとした時間が流れ、疲労が五体の隅々に沈着するのが分かる。目を閉じれば今にも眠りそうだった。家まであと数歩というところで、何もかも諦めてしまいたくなった。街灯が暗い車内を照らしている。冷房がまだ残ってて足元が冷たい。お腹の調子も良くない。頭も目も疲れきって重い。そういうどうしようもないことが世の中に満ちている。この車内でさえもういっぱいいっぱいなのに。尚更そういうことで溢れた世界になんて出たくない。本当はこのままどこかへ走り去ってしまいたい。自分を閉ざしたまま、なにもかも置き去りにして、あるのかも知らないまま、信じきれないまま、何の責任も抑圧もない世界へと逃げ出したい。そうして永遠の安らぎを得ていたいのだ。どうしよう?どうすればいい?分からない…。嫌嫌嫌いやいやいやいや────なにもかも無理だ。
家の鍵を無くした。マジでヤバい。助けてくれ。まじで。