モペゾム・ド・思考

抽象性、無意味、無駄、

無視

起きるや否や怒りを顕にする。
冬の間はいつもこんな感じなのだが、最近これのライト版のような発作がチラチラ現れるようになった。

季節の変節を感じる要因は多々あるだろう。
皆は肌を撫でる風の冷たさなどで感覚的に実感したり、あるいは道に落ちる枯葉を見て感じるなんてのはとても麗しいことだと思う。

片や私のはとても粗暴だ。
美しき四季の移ろいには到底似つかわしくない感情と言って相違ない。
だが、これでもれっきとした変節と言えるのだ。

「冬の到来は近い」
感覚でもなく、事実でもない。不確かな本能が私に囁く。
それは私だけが感じることの出来る、私だけの冬なのだ。

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さて、その怒りは起床後数分で彼方に消えます。そもそも理由のない怒りですから、ずっと長いこと脳に留まることはまずありません。
ですが今、私は瞋恚の炎で燃え上がっております。

なぜでしょう?
理由は後輩に延々と無視られているからです。
11時頃に送った連絡はおよそ6時間の未読無視を経て、現在は既読無視1時間を通過中です。
遊びなら良いのです。他愛ない会話や、どうでもいい相槌なんかは、私でも2日寝かせます。
ですがこれはバイトの連絡なのです。

思いました。舐められているのかと、俺を、バイトを。
「舐められているのか」こんな驕ったことを思うのは我が恐縮の極まる人生において初めてで、もはや感動すら覚えるのです。
今催促を入れましたが、その文面においても恐縮を尽くす私は無を感じていました。
「俺は何に恐縮しているんだ?」
先述しました通り彼は後輩です。俺より経験も浅く、俺より頭身が2少ないです。
文面で「出勤して頂くことは可能でしょうか?」とお尋ねしたところは「出勤しろモジャ頭」でも何の問題もないはずです。
俺はこれ以上なく虚しくなりました。暖簾に腕押し、立板に水、糠に釘、陰毛に安剃刀、何の効果もないのです。

「後輩」というデカい枠組みで捉えてしまったら、私は私以前に生まれた世代をジェノサイドしかねない、そういった怒りです。

ただそんなことは──出来たとしても──しません。なぜなら母の顔が浮かぶのです。
私を優しい人間に育ててくれた母に、血と肉と陰毛に塗れた俺の姿なんて見せられません。
だから、私は殺しません。

今はただ感謝あるのみです。
母よ、私はこんなに立派に育ちましたよ。
母よ、産んでくれてありがとう。
母よ、催促を送ってからしばらく経ちましたがモジャ毛からの連絡は来ません。
母よ、私は彼に嫌われているのでしょうか?